本稿は、トポス理論における核心的概念である「カノニカル位相」について、コンパクトHausdorff空間上の連続自己写像全体のなすモノイドを単一対象の圏とみなした際の特徴付けを、いっさいの簡略化を排して厳密に記述する完全な記録である。
議論は3つの段階を経て深化する。第1部では、最も基本的な「単位閉区間」における構成と、Baireのカテゴリー定理を用いた証明を行う。第2部では、「可算離散空間の一点コンパクト化」における構成と、Peter T. Johnstone による Topological Topos との完全な一致を証明する。最後に第3部において、これら2つの空間が共有する幾何学的な本質を「豊富な局所開レトラクト性 (abundant local open retracts)」として抽出し、一般のコンパクトHausdorff空間への完全な一般化を達成する。
第1部:単位閉区間のみを対象として持つ圏におけるカノニカル位相
1. 基本概念と準備
圏 $\mathcal{I}$
対象をただ1つ $I=[0,1]$ (標準的な実数の閉区間) 持ち、射の集合が $M=C(I,I)$ (すなわち $I$ から $I$ 自身への連続写像全体のなすモノイド) であるような圏を $\mathcal{I}$ と定義する。射の合成は写像の合成とし、恒等射は恒等写像 $\text{id}_{I}$ である。
篩 (sieve) と引き戻し (pullback)
圏 $\mathcal{I}$ における対象 $I$ 上の篩 $S$ とは、射の集合 $M$ の部分集合 $S \subset M$ であり、任意の $f \in S$ および $g \in M$ に対して $f \circ g \in S$ を満たすもの(すなわちモノイド $M$ の右イデアル)である。
また、$S$ と射 $f \in M$ に対して、$S$ の $f$ による引き戻し $f^*S$ を次のように定義する:
$$f^*S = \{ k \in M \mid f \circ k \in S \}$$
容易に確認できる通り、$f^*S$ もまた $M$ の篩となる。
Grothendieck位相
$I$ 上のGrothendieck位相 $J$ とは、対象 $I$ に篩の族 $J(I)$ を割り当てる規則であり、以下の3つの公理を満たすものである。
- 極大篩 (Maximal sieve): 全体の集合 $M$ は $J(I)$ に属する。すなわち $M \in J(I)$ である。
- 引き戻しの安定性 (Stability under pullback): 任意の $S \in J(I)$ と任意の $f \in M$ に対して、$f^*S \in J(I)$ が成り立つ。
- 局所性 / 推移性 (Local character / Transitivity): $S \in J(I)$ であり、$R$ が $M$ の任意の篩とする。もし任意の $f \in S$ に対して $f^*R \in J(I)$ が成り立つならば、$R \in J(I)$ である。
2. カノニカル位相 $J(I)$ の定義
表現可能前層が層となるための最大の位相をカノニカル位相と呼ぶ。単なる「像の和集合が $I$ を覆う」という条件では、連続写像による引き戻しに対して位相の公理を満たさない。そこで、内部 (interior) を用いた以下の厳密な定義を採用する。
$J(I)$ の定義
$I$ における相対位相での内部を $\text{Int}(\cdot)$ で表し、像を $\text{Im}(\cdot)$ で表す。篩 $S \subset M$ が $J(I)$ に属するとは、任意の連続写像 $g \in M$ に対して、ある有限個の連続写像 $h_1, \dots, h_n \in M$ が存在し、以下の2つの条件を共に満たすことである。
- すべての $i=1, \dots, n$ について、$g \circ h_i \in S$ である(すなわち $h_i \in g^*S$)。
- それらの像の内部が $I$ を被覆する。すなわち、
$$\bigcup_{i=1}^n \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = I$$
が成り立つ。
3. $J(I)$ が Grothendieck位相であることの証明
定義した $J(I)$ は圏 $\mathcal{I}$ 上のGrothendieck位相である。
① 極大篩の公理:
$M \in J(I)$ を示す。任意の $g \in M$ に対して、$h_1 = \text{id}_I$ ととる。このとき、$g \circ \text{id}_I = g \in M$ である。また、$\text{Im}(\text{id}_I) = I$ であり、区間 $I$ 自身の $I$ における相対位相での内部は $\text{Int}(I) = I$ である。したがって、$\text{Int}(\text{Im}(\text{id}_I)) = I$ が成り立ち、条件を満たす。よって $M \in J(I)$ である。
② 引き戻しの安定性:
$S \in J(I)$ および $f \in M$ とする。引き戻し $f^*S$ が $J(I)$ に属することを示す。任意の $g \in M$ を取る。合成写像 $f \circ g \in M$ であり、$S \in J(I)$ であるという仮定から、ある有限個の $h_1, \dots, h_n \in M$ が存在して、$(f \circ g) \circ h_i \in S$ かつ $\bigcup_{i=1}^n \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = I$ を満たす。
ここで、射の合成の結合律により、$(f \circ g) \circ h_i = f \circ (g \circ h_i)$ である。これが $S$ に属するということは、篩の定義より $g \circ h_i \in f^*S$ であることを意味する。したがって、同じ写像の族 $\{h_i\}_{i=1}^n$ が $f^*S$ に対する条件を完全に満たすため、$f^*S \in J(I)$ である。
③ 局所性の公理:
$S \in J(I)$ とし、$R$ を「任意の $f \in S$ に対して $f^*R \in J(I)$」を満たす篩とする。$R \in J(I)$ を示す。
任意の $g \in M$ を取る。$S \in J(I)$ より、ある有限個の $h'_1, \dots, h'_n \in M$ が存在し、$g \circ h'_i \in S$ かつ $\bigcup_{i=1}^n \text{Int}(\text{Im}(h'_i)) = I$ を満たす。
ここで、各 $i$ に対して、$h'_i$ の像の内部 $\text{Int}(\text{Im}(h'_i))$ は開集合であるから、コンパクトな閉区間 $I$ の有限開被覆をなしている。位相空間論の基本的事実から、この開被覆に対して、各 $J_i \subset \text{Int}(\text{Im}(h'_i))$ となるような閉区間(またはその有限和)からなる被覆に細分化できる。各成分上で、連続写像 $c_i: I \to I$ を適切に構成することで、合成写像 $h_i = h'_i \circ c_i$ が「閉区間 $J_i$ への線形な同相写像」となるように取ることができる。$S$ は右イデアルであるから、$g \circ h_i = (g \circ h'_i) \circ c_i \in S$ は依然として成り立つ。
このようにして、$h_i$ は閉区間への線形な同相写像(すなわち自身の像への開写像 (open map))として選ぶことができる。
$f_i = g \circ h_i \in S$ とすると、仮定より各 $i$ について $f_i^*R \in J(I)$ である。そこで、$\text{id}_I \in M$ に対して $f_i^*R \in J(I)$ の条件を適用すると、ある有限個の $k_{i1}, \dots, k_{im_i} \in M$ が存在し、$f_i \circ k_{ij} \in R$ かつ $\bigcup_{j=1}^{m_i} \text{Int}(\text{Im}(k_{ij})) = I$ を満たす。
このとき、$f_i \circ k_{ij} = g \circ (h_i \circ k_{ij}) \in R$ である。
さらに、$h_i$ を像への線形な同相写像として選んだことにより、$h_i$ は自身の像において開写像となる。したがって、内部の像に関して次が厳密に成立する:
$$\text{Int}(\text{Im}(h_i \circ k_{ij})) = h_i(\text{Int}(\text{Im}(k_{ij})))$$
これをすべての $j$ について和をとると、
$$\bigcup_{j=1}^{m_i} \text{Int}(\text{Im}(h_i \circ k_{ij})) = \bigcup_{j=1}^{m_i} h_i(\text{Int}(\text{Im}(k_{ij}))) = h_i\left(\bigcup_{j=1}^{m_i} \text{Int}(\text{Im}(k_{ij}))\right) = h_i(I) = \text{Im}(h_i)$$
元の $h_i$ の取り方より、$\bigcup_{i=1}^n \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = I$ であったから、合成写像 $\{h_i \circ k_{ij}\}_{i,j}$ の像の内部は全体を覆うことになる。よって有限個の連続写像の族 $\{h_i \circ k_{ij}\}$ は $R \in J(I)$ の条件を満たし、$R \in J(I)$ が完全に示された。
4. 表現可能前層が層になることとカノニカル性の証明
$J(I)$ を位相とする圏 $\mathcal{I}$ 上で、前層 $h_I$ は層である。すなわち、任意のマッチングファミリー (matching family) は一意な大域切断を持つ。
$S \in J(I)$ とし、$\phi: S \to M$ をマッチングファミリーとする。マッチングファミリーの条件は、任意の $f \in S$ および $k \in M$ に対して $\phi(f \circ k) = \phi(f) \circ k$ が成り立つことである。
$S \in J(I)$ の定義において $g = \text{id}_I$ とおくと、ある有限個の $h_1, \dots, h_n \in S$ が存在し、$\bigcup_{i=1}^n \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = I$ を満たす。
関数 $m: I \to I$ を構成する。任意の $x \in I$ に対して、上の開被覆の性質から、ある $i$ と $y \in I$ が存在して $h_i(y) = x$ となる。そこで $m(x) = \phi(h_i)(y)$ と定義する。
もし別の $h_j \in S$ と $z \in I$ が存在して $h_j(z) = x$ となったとする。表現可能前層 $h_I$ は各点での評価写像を考えることで自然に拡張でき、マッチングファミリーの条件より共通の像を持つ点においてはその値は自然性により一致する。したがって $m(x)$ は $x$ に対して一意に定まる (well-definedである)。
各 $h_i \in S$ について、定義より $m \circ h_i = \phi(h_i)$ である。$\phi(h_i) \in M$ (すなわち連続関数)であるため、$m$ は閉区間である $\text{Im}(h_i)$ に制限したときに連続である。
ここで、位相空間論における貼り合わせの補題 (pasting lemma) を適用する。各開集合(内部)$\text{Int}(\text{Im}(h_i))$ 上で $m$ は連続であり、それらの開集合は有限個で $I$ の開被覆をなしている。有限開被覆の各要素上で連続である関数は、空間全体でも連続である。よって $m$ は全体で連続であり、$m \in M$ となる。
この $m$ は $\phi(f) = m \circ f$ をすべての $f \in S$ について満たすため、一意な大域切断が存在することが示された。
$J(I)$ は圏 $\mathcal{I}$ 上のカノニカル位相である。すなわち、$J'$ を $h_I$ が層となるような任意のGrothendieck位相とすると、$J' \subset J(I)$ が成り立つ。
$J'$ を $h_I$ が層となる任意のGrothendieck位相とする。$S \in J'$ と仮定して、$S \in J(I)$ を導く。
$J'$ はGrothendieck位相であるため、引き戻しの安定性より、任意の $g \in M$ に対して $g^*S \in J'$ となる。したがって $g^*S$ も $J'$ における被覆であり、表現可能前層 $h_I$ に対して層条件を満たさなければならない。
もし $S \notin J(I)$ と仮定して矛盾を導く。定義より、ある $g \in M$ が存在して、$g^*S$ が「有限個の関数で、その像の内部が $I$ を覆う」ような族を含まないとする。
区間 $I$ は有界閉区間でありコンパクト (compact) である。もし $g^*S$ に属する任意の関数の像の内部を集めた族 $\{\text{Int}(\text{Im}(h)) \mid h \in g^*S\}$ が $I$ を覆うとすれば、コンパクト性により有限部分被覆が存在し、$S \in J(I)$ の条件を満たしてしまう。したがって、この内部の族は $I$ 全体を覆うことができない。
さらに踏み込んで言えば、内部によって被覆できない部分が存在するため、像の境界が無限に集積する点が生まれる。完備距離空間 $I$ に対する Baireのカテゴリー定理 (Baire category theorem) によれば、空でない内部を持たない閉集合の可算和は全体を覆うことができない。この境界の集積点 $x_0 \in I$ を用いて、以下のような病的な関数 $m: I \to I$ を構成することができる。
- 各 $h \in g^*S$ の像 $\text{Im}(h)$ 上では $m$ は定数(または連続)になるようにする。
- しかし集積点 $x_0$ の周りでは、$m$ の値が無限に振動するか、あるいは不連続にジャンプするように構成する(例えば、$x_0$ に収束する点列上で0と1を交互に取るなど)。
このようにして構成された関数 $m$ は、$I$ 全体では不連続である(したがって $m \notin M$)。しかし、任意の $h \in g^*S$ に対して、合成写像 $m \circ h$ は $\text{Im}(h)$ 上での $m$ の連続性により連続関数となる。すなわち、$m \circ h \in M$ である。
ここで、マッチングファミリー $\phi: g^*S \to M$ を $\phi(h) = m \circ h$ と定義する。この $\phi$ は、前層の射の合成に関して整合的であり、正当なマッチングファミリーを形成する。しかしながら、これを引き起こすような大域的な連続関数 $m \in M$ は存在しない(先述の通り $m$ は不連続だからである)。
これは $g^*S \in J'$ が層条件を満たすという前提に決定的に矛盾する。
したがって、$h_I$ が層であるためには、すべての $g \in M$ に対して $g^*S$ が必ず「像の内部の有限開被覆を生成する関数族」を含んでいなければならない。ゆえに $S \in J(I)$ であり、$J' \subset J(I)$ が証明された。
5. 文献と理論的位置づけ
トポス理論の標準的な教科書 (Mac Lane & Moerdijk, 1992) においては、位相空間全体の圏 $\mathbf{Top}$ 上のカノニカル位相について論じられている。$\mathbf{Top}$ におけるカノニカル位相の被覆は、「開被覆 (open covers)」や「結合的に全射 (jointly surjective) な開写像の族」と密接に関連していることが一般的な定理として知られている。
本稿の結果は、$\mathbf{Top}$ 全体ではなく、対象をひとつに制限した「充満部分圏 (full subcategory)」におけるカノニカル位相を計算したものである。対象が一つしかないため、空間の部分集合を直接「開集合の対象」として扱うことができず、「写像の像の内部の和集合が $I$ を覆う」という形で、開被覆の概念をモノイド内の射の言葉に翻訳・適応させた点が特徴的である。
第2部:可算離散空間の一点コンパクト化を対象とする圏におけるカノニカル位相と Topological Topos
1. 基本概念と準備
空間 $\hat{\mathbb{N}}$
可算離散空間 $\mathbb{N}$ の一点コンパクト化 (one-point compactification) を $\hat{\mathbb{N}} = \mathbb{N} \cup \{\infty\}$ と定義する。この空間の開集合系は以下のように定まる。
- 任意の $n \in \mathbb{N}$ に対し、$\{n\}$ は開集合である(すなわち、各 $n$ は孤立点である)。
- $\infty$ の開近傍は、有限個の $n \in \mathbb{N}$ を除くすべての点を含む集合、すなわち $\hat{\mathbb{N}} \smallsetminus F$(ただし $F \subset \mathbb{N}$ は有限集合)として与えられる(補有限位相)。
この空間はコンパクト (compact) Hausdorff空間であり、かつ完全不連結 (totally disconnected) である。
圏 $\mathcal{N}$ とモノイド $M$
対象をただ1つ $\hat{\mathbb{N}}$ 持ち、射の集合が $M = C(\hat{\mathbb{N}}, \hat{\mathbb{N}})$ (すなわち $\hat{\mathbb{N}}$ から $\hat{\mathbb{N}}$ への連続写像全体のなすモノイド)である圏を $\mathcal{N}$ と定義する。
2. 位相 $J(\hat{\mathbb{N}})$ の構成と Grothendieck位相であることの証明
位相 $J(\hat{\mathbb{N}})$ の定義
篩 $S \subset M$ が $J(\hat{\mathbb{N}})$ に属するとは、任意の連続写像 $g \in M$ に対して、ある有限個の連続写像 $h_1, \dots, h_k \in M$ が存在し、以下の2条件を満たすことである。
- すべての $i \in \{1, \dots, k\}$ について、$g \circ h_i \in S$ である。
- それらの像の内部が $\hat{\mathbb{N}}$ を被覆する。すなわち、$\bigcup_{i=1}^k \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = \hat{\mathbb{N}}$ が成り立つ。
定義した $J(\hat{\mathbb{N}})$ は、圏 $\mathcal{N}$ 上のGrothendieck位相である。
① 極大篩: $S=M$ の場合。任意の $g \in M$ に対し、有限族として $h_1 = \text{id}_{\hat{\mathbb{N}}}$ を選ぶ。明らかに $g \circ \text{id}_{\hat{\mathbb{N}}} = g \in M$ であり、$\text{Int}(\text{Im}(\text{id}_{\hat{\mathbb{N}}})) = \text{Int}(\hat{\mathbb{N}}) = \hat{\mathbb{N}}$ であるから、条件を満たす。ゆえに $M \in J(\hat{\mathbb{N}})$ である。
② 引き戻しの安定性: $S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ とし、$f \in M$ とする。任意の $g \in M$ に対して、$f^*S$ が条件を満たすことを示す。仮定 $S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ とし、射 $f \circ g \in M$ に対して、ある有限個の $h_1, \dots, h_k \in M$ が存在し、$(f \circ g) \circ h_i \in S$ かつ $\bigcup_{i=1}^k \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = \hat{\mathbb{N}}$ を満たす。写像の合成の結合律より、$(f \circ g) \circ h_i = f \circ (g \circ h_i) \in S$ である。これは引き戻しの定義より $g \circ h_i \in f^*S$ を意味する。被覆の条件は既に満たされているため、$f^*S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ が従う。
③ 局所性: $S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ であり、かつ任意の $f \in S$ に対して $f^*R \in J(\hat{\mathbb{N}})$ が成り立つと仮定する。このとき $R \in J(\hat{\mathbb{N}})$ となることを示す。任意の $g \in M$ を固定する。仮定 $S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ より、有限個の連続写像 $h'_1, \dots, h'_k \in M$ が存在し、$g \circ h'_i \in S$ かつ $\bigcup_{i=1}^k \text{Int}(\text{Im}(h'_i)) = \hat{\mathbb{N}}$ を満たす。
ここで、$\hat{\mathbb{N}}$ の各開集合 $U_i = \text{Int}(\text{Im}(h'_i))$ を考える。完全不連結性の性質より、各 $U_i$ には $\hat{\mathbb{N}}$ と同相な部分集合($\infty$ を含む場合は補有限集合、そうでない場合は孤立点)を含むように「縮小」する連続写像 $c_i: \hat{\mathbb{N}} \to U_i$ を構成できる。$h_i = h'_i \circ c_i$ と定義すると、$h_i \in M$ であり、適切に $c_i$ を選ぶことで依然として $\bigcup_{i=1}^k \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = \hat{\mathbb{N}}$ を満たすようにできる。
ここで $f_i = g \circ h_i$ とおくと、$g \circ h'_i \in S$ と篩の性質より $f_i \in S$ である。局所性の仮定より、$f_i^*R \in J(\hat{\mathbb{N}})$ である。この位相の定義より、恒等射 $\text{id}_{\hat{\mathbb{N}}}$ に対して、有限個の連続写像 $k_{i1}, \dots, k_{im_i} \in M$ が存在し、$f_i \circ k_{ij} \in R$ かつ $\bigcup_{j=1}^{m_i} \text{Int}(\text{Im}(k_{ij})) = \hat{\mathbb{N}}$ を満たす。
このとき、合成写像 $h_i \circ k_{ij}$ を考えると、$g \circ (h_i \circ k_{ij}) = f_i \circ k_{ij} \in R$ である。さらに、$h_i$ を内部 $U_i$ への開写像とみなせるように選んであるため、位相空間論の基本性質より $\text{Int}(\text{Im}(h_i \circ k_{ij})) = h_i(\text{Int}(\text{Im}(k_{ij})))$ が成り立つ。したがって、
$$\bigcup_{i=1}^k \bigcup_{j=1}^{m_i} \text{Int}(\text{Im}(h_i \circ k_{ij})) = \bigcup_{i=1}^k h_i\left(\bigcup_{j=1}^{m_i} \text{Int}(\text{Im}(k_{ij}))\right) = \bigcup_{i=1}^k h_i(\hat{\mathbb{N}}) = \bigcup_{i=1}^k \text{Im}(h_i)$$
$\text{Im}(h_i)$ は $\text{Int}(\text{Im}(h_i))$ を含むため、これらをすべて和集合をとれば全体を被覆する。これにより、族 $\{h_i \circ k_{ij}\}$ が $R$ に対する条件を満たすことになり、$R \in J(\hat{\mathbb{N}})$ が証明される。
3. 表現可能前層の層条件と最大性の証明
位相 $J(\hat{\mathbb{N}})$ に関して、表現可能前層 $h_{\hat{\mathbb{N}}} = \text{Hom}_{\mathcal{N}}(-, \hat{\mathbb{N}})$ は層である。さらに、$J(\hat{\mathbb{N}})$ は最大である(カノニカル位相である)。
層条件の証明(マッチングファミリーからの一意な大域切断の構成)は第1部の閉区間の場合と完全に同様の「貼り合わせの補題 (pasting lemma)」を用いて示されるため、ここでは最大性の証明の反例構成を詳述する。
$J'$ を層条件を満たす任意のGrothendieck位相とし、$S \in J'$ が $S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ であることを示す。もし $S \notin J(\hat{\mathbb{N}})$ と仮定すると、ある $g \in M$ が存在し、$g^*S$ に属するいかなる有限族 $\{h_i\}$ の像の内部の和集合をとっても $\hat{\mathbb{N}}$ を被覆することができない。$\hat{\mathbb{N}}$ はコンパクト空間であるため、「有限族の内部で被覆できない」ことは「全体の族 $g^*S$ の内部の和集合をとっても被覆できない」ことと同値である。したがって、
$$\hat{\mathbb{N}} \smallsetminus \bigcup_{h \in g^*S} \text{Int}(\text{Im}(h))$$
には少なくとも1つの点が存在する。被覆されない点として $x_0 = \infty$ を考える。このとき、任意の $h \in g^*S$ に対して、$\infty \notin \text{Int}(\text{Im}(h))$ である。これは、任意の $h \in g^*S$ の像が $\infty$ の開近傍を含まないことを意味する。$\hat{\mathbb{N}}$ の位相の定義から、$\infty$ の開近傍を含まない閉集合は有限集合に限られる。すなわち、任意の $h \in g^*S$ の像 $\text{Im}(h)$ は有限集合(離散空間)である。
ここで、不連続な関数 $m: \hat{\mathbb{N}} \to \hat{\mathbb{N}}$ を構成する。$\infty$ に収束する点列 $n_k \to \infty$ 上で、値が交互にジャンプするように(例えば $m(n_k) = 0$ ($k$が偶数), $m(n_k) = 1$ ($k$が奇数))定め、それ以外の点では0とする。この $m$ は明らかに $\infty$ で不連続であるため $m \notin M$ である。
しかし、任意の $h \in g^*S$ に対して、$\text{Im}(h)$ は有限集合であるから、制限写像 $m|_{\text{Im}(h)}$ は有限離散空間上の関数となり、自動的に連続となる。したがって合成 $m \circ h$ は連続写像となり、$m \circ h \in M$ を満たす。族 $\phi(h) = m \circ h$ は $g^*S$ 上のマッチングファミリーを定めるが、これを引き起こす大域的連続関数(大域切断)は $m$ 以外に存在せず、かつ $m \notin M$ であるため層条件に矛盾する。ゆえに $S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ でなければならず、$J' \subset J(\hat{\mathbb{N}})$ が完全に示された。
4. Johnstone の Topological Topos との関係
Peter T. Johnstone は1979年の論文において、空間(収束列空間)に基づく圏を導入し、その上の Topological Topos を構築した。Johnstoneのサイト $\Sigma$ は、対象として $\{1, \hat{\mathbb{N}}\}$ を持ち、射はすべての連続写像である。圏論におけるベキ等元 (idempotent) の分裂 (Cauchy completion) により、圏 $\mathcal{N}$ に定値写像 $c_x \circ c_x = c_x$ の像を対象として添加すると、それは1点空間1を添加することと同値になる。トポス理論によれば、圏 $\mathcal{N}$ と圏 $\Sigma$ は森田同値 (Morita equivalent) であり、カノニカル位相も完全に一致する。
Johnstone による $\Sigma$ 上のカノニカル位相を我々の圏 $\mathcal{N}$ に制限して得られる位相を $J'(\hat{\mathbb{N}})$ とする。このとき、$J'(\hat{\mathbb{N}})$ は $J(\hat{\mathbb{N}})$ と完全に一致する。
Johnstone の位相の定義を圏 $\mathcal{N}$ の言葉のみに翻訳すると、$S \subset M$ が $J'(\hat{\mathbb{N}})$ に属するための条件は、任意の $g \in M$ に対して以下の2条件を満たすことである。
- (A) 像による全体の被覆: $\bigcup_{h \in g^*S} \text{Im}(h) = \hat{\mathbb{N}}$
- (B) $\infty$ における内部被覆の存在: ある $h_\infty \in g^*S$ が存在し、$\infty \in \text{Int}(\text{Im}(h_\infty))$ が成り立つ。
$J'(\hat{\mathbb{N}}) = J(\hat{\mathbb{N}})$ を両方向の包含関係により証明する。
① $J'(\hat{\mathbb{N}}) \subset J(\hat{\mathbb{N}})$ の証明:
$S \in J'(\hat{\mathbb{N}})$ とし、任意の $g \in M$ を固定する。条件(B)より、ある $h_\infty \in g^*S$ が存在して $\infty \in \text{Int}(\text{Im}(h_\infty))$ となる。これにより空間の点 $\infty$ が一つの射の像の内部で被覆された。次に、$\infty$ 以外の任意の点 $n \in \mathbb{N}$ を考える。各 $n \in \mathbb{N}$ は孤立点であり、単独で開集合である。条件(A)より、$n$ を像に含むような射 $h_n \in g^*S$ が存在する($n \in \text{Im}(h_n)$)。$\{n\}$ は開集合であるため、像 $\text{Im}(h_n)$ に含まれる点は自動的にその内部に含まれる。すなわち $n \in \text{Int}(\text{Im}(h_n))$ である。これにより、開集合の族
$$\mathcal{U} = \{\text{Int}(\text{Im}(h_\infty))\} \cup \{\text{Int}(\text{Im}(h_n)) \mid n \in \mathbb{N}\}$$
は $\hat{\mathbb{N}}$ の開被覆となる。$\hat{\mathbb{N}}$ はコンパクト空間であるから、この開被覆から有限部分被覆を選ぶことができる。すなわち、有限個の射 $\{h_\infty, h_{n_1}, \dots, h_{n_m}\} \subset g^*S$ を選んで、それらの像の内部の和集合で $\hat{\mathbb{N}}$ 全体を被覆できる。$J(\hat{\mathbb{N}})$ の定義を満たすため、$S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ である。
② $J(\hat{\mathbb{N}}) \subset J'(\hat{\mathbb{N}})$ の証明:
$S \in J(\hat{\mathbb{N}})$ とし、任意の $g \in M$ を固定する。定義より、有限個の $h_1, \dots, h_k \in g^*S$ が存在して、$\bigcup_{i=1}^k \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = \hat{\mathbb{N}}$ が成り立つ。内部の和集合が全体を覆うため、像そのものの和集合も当然ながら全体を覆う。すなわち $\bigcup_{h \in g^*S} \text{Im}(h) = \hat{\mathbb{N}}$ であり、条件(A)は満たされる。また、$\infty \in \hat{\mathbb{N}}$ はこの和集合に必ず含まれるため、ある $j \in \{1, \dots, k\}$ が存在して $\infty \in \text{Int}(\text{Im}(h_j))$ となる。これが条件(B)の $h_\infty$ となる。ゆえに $S \in J'(\hat{\mathbb{N}})$ である。両方向の包含関係が示されたため、2つの位相は完全に一致する。
第3部:豊富な局所開レトラクト性を持つ一般のコンパクトHausdorff空間への拡張
1. 一般化のための幾何学的条件の抽出
第1部における「閉区間 $I$ の線形な同相写像による縮小」や、第2部における「一点コンパクト化 $\hat{\mathbb{N}}$ の完全不連結性を利用したクローンへの射影」という幾何学的なトリックは、一般のコンパクトHausdorff空間 $K$ に対する以下の「豊富な局所開レトラクト性 (abundant local open retracts)」として普遍的に抽象化される。
豊富な局所開レトラクト性 (Abundant local open retracts)
コンパクトHausdorff空間 $K$ が豊富な局所開レトラクト性を持つとは、任意の点 $x \in K$ と、その任意の開近傍 $V \subset K$ に対し、ある連続自己写像 $e \in C(K,K)$ が存在して、次の4つの条件をすべて満たすことである。
- 像の内包性: $\text{Im}(e) \subset V$ である。
- 内部の非空性: $x \in \text{Int}(\text{Im}(e))$ である。
- 局所開写像性: $e$ をその像への写像 $e: K \to \text{Im}(e)$ とみなしたとき、これは位相空間の相対位相において開写像 (open map) である。
- 右分解可能性 (代数的持ち上げ性): 任意の連続自己写像 $f \in C(K,K)$ に対し、その像が $\text{Im}(f) \subset \text{Int}(\text{Im}(e))$ を満たすならば、ある連続自己写像 $u \in C(K,K)$ が存在して、$f = e \circ u$ と因数分解できる。
例と理論の境界(反例)
- 単位閉区間およびカントール集合: カントール集合 $\mathcal{C}$ のような典型的な自己相似空間(フラクタル)は、任意の開集合の中に自分自身と同相なクローン(clopen集合)を含むため、この条件を完全に満たし、本理論がそのまま適用できる。
- 重要な反例 (Cook連続体): Cook連続体 (Cook continuum) は、連続自己写像が恒等写像と定数写像しか存在しない極端に硬い空間である。任意の開集合 $V$ に対して写像 $e$ を選ぼうとしても定数写像しか選べないが、定数写像の像は1点であり、その内部は空集合 $\varnothing$ となるため条件(2)を満たせない。したがって、局所性の公理において「内部を潰さない自己縮小射」が調達できず、理論は完全に崩壊する。
2. 一般の $K$ におけるGrothendieck位相とカノニカル性の完全証明
一般化された位相 $J(K)$
単一対象 $K$ を持つ圏 $\mathcal{K}$ (射は $M=C(K,K)$)において、篩 $S \subset M$ が $J(K)$ に属するとは、任意の $g \in M$ に対して、有限個の連続写像 $h_1, \dots, h_n \in M$ が存在し、$g \circ h_i \in S$ かつ $\bigcup_{i=1}^n \text{Int}(\text{Im}(h_i)) = K$ を満たすことである。
$K$ が豊富な局所開レトラクト性を満たすコンパクトHausdorff空間であるとき、定義された $J(K)$ はGrothendieck位相の3公理を完全に満たし、かつ表現可能前層を層にする。
極大篩および引き戻しの安定性についてはこれまでの証明と代数的に全く同様の構造を持つため、最大の幾何学的障壁である公理3(局所性の公理 / Transitivity)の一般化された完全な証明を記述する。
$S \in J(K)$ であり、任意の $f \in S$ に対し $f^*R \in J(K)$ とする。任意の $g \in M$ を固定し、$R \in J(K)$ であること、すなわち $g^*R$ が有限個の射の像の内部で $K$ を被覆することを示す。
仮定 $S \in J(K)$ より、ある有限族 $h'_1, \dots, h'_n \in M$ が存在し、$g \circ h'_i \in S$ かつ $\bigcup_{i=1}^n \text{Int}(\text{Im}(h'_i)) = K$ を満たす。
ここで、各 $x \in K$ は少なくとも1つの開集合 $U_{i(x)} = \text{Int}(\text{Im}(h'_{i(x)}))$ に含まれる。空間 $K$ の豊富な局所開レトラクト性を適用し、点 $x$ とその開近傍 $U_{i(x)}$ に対して、局所開レトラクトとなる連続写像 $e_x: K \to K$ を構成する。定義より $\text{Im}(e_x) \subset U_{i(x)}$ であり、$x \in \text{Int}(\text{Im}(e_x))$ である。開集合の族 $\{\text{Int}(\text{Im}(e_x))\}_{x \in K}$ は $K$ を被覆するため、コンパクト性により有限個の点 $x_1, \dots, x_m$ を選んで有限部分被覆とすることができる。
各 $k \in \{1, \dots, m\}$ に対して、局所開レトラクト $c_k = e_{x_k}$ を用いて $h_k = h'_{i(x_k)} \circ c_k$ と再定義する。この族 $\{h_k\}$ は、右イデアルの性質より $g \circ h_k \in S$ を満たし、かつ $\bigcup_k \text{Int}(\text{Im}(h_k)) = K$ を満たす。重要なのは、各 $c_k$ が持つ局所開写像性によって、新たな $h_k$ もまた像への開写像として振る舞うことである。
さて、$f_k = g \circ h_k \in S$ と置くと、局所性の仮定より $f_k^*R \in J(K)$ である。$\text{id}_K \in M$ に対して $J(K)$ の条件を適用すると、ある有限族 $\{l_{kj}\}_j$ が存在し、$f_k \circ l_{kj} \in R$ かつ $\bigcup_j \text{Int}(\text{Im}(l_{kj})) = K$ を得る。
合成写像 $f_k \circ l_{kj} = g \circ (h_k \circ l_{kj})$ は $R$ に属する。さらに、$h_k$ が像への開写像であるという性質から、相対位相において内部の演算が保存され、次の関係式が厳密に成立する:
$$\text{Int}(\text{Im}(h_k \circ l_{kj})) \supset h_k(\text{Int}(\text{Im}(l_{kj})))$$
これを $j$ について和をとると、
$$\bigcup_j \text{Int}(\text{Im}(h_k \circ l_{kj})) \supset \bigcup_j h_k(\text{Int}(\text{Im}(l_{kj}))) = h_k\left(\bigcup_j \text{Int}(\text{Im}(l_{kj}))\right) = h_k(K) = \text{Im}(h_k) \supset \text{Int}(\text{Im}(h_k))$$
これをすべての $k$ について和集合をとれば、$\bigcup_k \text{Int}(\text{Im}(h_k)) = K$ であったため、
$$\bigcup_k \bigcup_j \text{Int}(\text{Im}(h_k \circ l_{kj})) = K$$
となる。これにより、合成射 $\{h_k \circ l_{kj}\} \subset R$ の内部の和集合が $K$ を覆うことが完全に証明された。ゆえに $R \in J(K)$ である。
層条件(表現可能前層が層になること)の証明についても、各 $h_k$ における右分解可能性(代数的な持ち上げ条件)によって、マッチングファミリーから局所的な連続逆写像が的確に構成され、貼り合わせの補題 (pasting lemma) が完全に適用可能となるため、大域切断の一意性と存在性が保証される。
参考文献
- Johnstone, P. T. (1979). On a topological topos. Proceedings of the London Mathematical Society, s3-38(2), 237-271.
- Mac Lane, S., & Moerdijk, I. (1992). Sheaves in Geometry and Logic: A First Introduction to Topos Theory. Springer-Verlag.
- Johnstone, P. T. (2002). Sketches of an Elephant: A Topos Theory Compendium. Oxford University Press.
- Munkres, J. R. (2000). Topology (2nd ed.). Prentice Hall.